Opening Seminar
2016年3月に設立に際したオープニングセミナーを行いました。

2016年3月3日、一般社団法人スーパーセンシングフォーラムの設立に際してのオープニングセミナーを東京大学伊東謝恩ホールにて行いました。 東京大学をはじめとする6名の教授陣と、海外からはEric Brockmeyer氏(Disney Research)、Rebeccah Pailes-Friedman氏(Pratt Institute教授)にお越しいただき、先端的なセンシング関連の講演を頂きました。

Eric Brockmeyer

Research Associate, Disney Research Pittsburgh

デジタルファブリケーション、タンジブルインタラクション、パラメトリックデザイン、モノ作りのスペシャリスト。Carnegie Mellon大学で物理学とアートを学んだ後、インディアナ州の整形外科機器メーカーに勤務。その後、Ball State大学で建築の修士を取得し、そこでデジタルファブリケーションのフェローとして働く。Carnegie Mellon大学のタンジブルインタラクションデザイン修士学生としては、インタラクティブファブリケーション、インタラクティブプロジェクション、光とタッチセンサーテクノロジーを融合したオーガニックマテリアルにの研究に努めた。現在彼はDisney Research PittsburghでLab Associateとして様々なインタラクティブプロジェクトの開発に取り組んでいる。また、Carnegie Mellon大学のSchool of Architectureでデジタルメディアを教えている。

インテリジェントマテリアルと電磁センシングの新しい手法を組み合わせることで、インタラクティブな体験を生みだす――。そのためにはまず最初に、光や音などの物信号を伝達し、それを別の物理信号に変換できる仕組みを作ることのできる製造ツールを活用することが必要になる。次に、機械学習ツールとキャパシティブシグネチャー、電磁放射、電波を組み合わせて、体や環境の対象物を計測するセンサーを作ることである。これらのツールによって革新的なアプリケーションを作り出すことが可能となり、私達の生活の中の平凡なモノにインタラクティビティーをもたらしてくれるはずである。

Rebeccah Pailes-Friedman

Pratt Institute, School of Design, Department of Industrial Design 教授

スマートテキスタイルを使ったウエアラブル技術に関する先端デザイナーであり、デザインメソドロジー、スマートマテリアル、ウエアラブルのリサーチパイオニア。教授を務めるPratt Instituteでは、ファッションとテクノロジーを融合する「Interwoven Design Group」を率いる。Fira、Champion、Nikeにてデザインディレクターを務めたほか、Pratt Instituteで「Intelligent Materials Applied Research & Innovation(IMARI)Lab」の設立ディレクターであり、「Brooklyn Fashion + Design Accelerator」 においてウエアラブルテクノロジーのリサーチフェローであった。最近のプロジェクトとしては感情とコミュニケートする動的なアクセサリである、「BioWear」がある。彼女の独自の視点は国際的に展開されており、クライアントはスタートアップ企業からNASAまでに及ぶ。2016年1月にデザインテクノロジストとしての仕事と生活を綴った「Smart Textiles for Designers: Inventing the Future of Fabrics」(Laurence King Publishers, London)を出版した。

私たちは今、人間の体と身の回りのさまざまなものの境界が消える技術変革の真っ只中にいる。「スマートテキスタイル」はまさに、この変革のキーとなる部分である。先日出版した、”Smart Textiles for Designers”においては、布に埋め込んだり、合体させたり、取り付けたりすることのできる、「スマートテキスタイル」の様々な資質や特性について紹介し、「スマートテキスタイル」の適用先としてヘルスケア、オートクチュールから消防、スポーツウエアまで様々なコンテクストについて着目した。先端デザイナーやデザインチームへのインタビューを通して見えてきた「スマートテキスタイル」の使い方および開発手法に加え、今後スーパーセンシングのコンセプトが組み込まれたアパレルや製品を開発していく上で、「スマートテキスタイル」がどのようにリードできるかについて考えていきたい。

中川 總

東京大学大学院 工学系研究科 特任教授 / プロダクトデザイナー、デザインコンサルタント

プロダクトデザイナー/デザイン・エンジニア/デザインコンサルタント。トライポッド・デザインCEO(最高経営責任者)、一般社団法人スーパーセンシングフォーラム理事、東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻特任教授。ユニバーサルデザインの日本・アジア地区における提唱者。2000年代からは使い手の予測感性に注目をした「期待学」の理論と研究を進め、2008年からは実際の製品開発やサービスの計画の中に期待学の理論を導入したプロジェクトに関わり、多くのデザイン工学的発見に寄与する。2010年から企業参加型の研究会「期待学研究会」を主宰し、現在も100社を超える参加企業の関心を集めている。2015年よりセンサとセンシングの新しい概念 「SUPER SENSING」を構築し、活動を進めている。

スーパーセンシングとは私達の五感の拡張を意味する新たな概念です。近年、多様且つ高度に発達するセンサー・テクノロジーは加速する機械学習の支援を受けて、私達がかつて意識し得なかった世界の感覚情報を私達の脳にもたらしつつあります。この感覚の拡張と呼べる科学的なテーマと領域に注目し、これらの技術をいかにして私達の暮らしや社会基盤の未来を形作る価値に醸成していくのか?スーパーセンシングを新たなデザイン・メソッドやアルゴリズムの創出に繋げる論理と方法論について考えたい。

割澤 伸一

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授

東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻 教授
1994年3月東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了博士(工学)
多軸力情報を用いた知能化生産システムの研究
東京工業大学助手,東京大学講師,准教授を経て現職
人・モノ・環境の全てのものを対象として、新しい検出原理のセンサデバイスおよび分析技術の研究とともに、身近な生活環境のモニタリングシステム、人間の行動や思考プロセスの分析・可視化システム、人の感情や周囲環境を伝達する雰囲気コミュニケーションシステムなど、革新的なセンシングシステムの開発を進め、安心・安全で快適な生活環境の実現を目指している。

スーパーセンシングとは私達の五感の拡張を意味する新たな概念です。近年、多様且つ高度に発達するセンサー・テクノロジーは加速する機械学習の支援を受けて、私達がかつて意識し得なかった世界の感覚情報を私達の脳にもたらしつつあります。この感覚の拡張と呼べる科学的なテーマと領域に注目し、これらの技術をいかにして私達の暮らしや社会基盤の未来を形作る価値に醸成していくのか?スーパーセンシングを新たなデザイン・メソッドやアルゴリズムの創出に繋げる論理と方法論について考えたい。

中尾 政之

東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 教授

1983年東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻修士課程修了。 同年、日立金属株式会社勤務、1989年HMT Technology Corp.に出向、1992年東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻助教授、2001年東京大学工学部附属総合試験所教授を経て、2006年より東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻教授。 専門はナノ・マイクロ加工、加工の知能化、科学器械の微細化、失敗学。 著書に「設計のナレッジマネジメント」(日刊工業新聞社)、「機械創造学」(丸善)、「生産の技術」(養賢堂)、「創造設計学」(丸善)、「公理的設計」(森北出版)、「失敗百選」(森北出版)、「失敗は予測できる」(光文社)、「失敗の予防学」(三笠書房)、「創造設計の技法」(日科技連)、創造はシステムである―「失敗学」から「創造学」へ―(角川書店)、知っておくべき家電製品事故50選(日刊工業新聞社)、「続・失敗百選」(森北出版)、「続々・失敗百選」(森北出版)など。

日本のエンジニアにとって、スーパーセンシングはお家芸のメカトロニクスの延長線上にあり、how to make には自信を持っている。ところが、what to do の戦略立案が苦手で、そこにはもっと一般ユーザーに寄り添った感性が高いプランナーが必要になる。今後、スーパーセンシングプロジェクトは、エンジニアとプランナーとの両方が噛み合って推進される。

廣瀬 通孝

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授

昭和29年5月7日生まれ、神奈川県鎌倉市出身。 昭和57年3月、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。同年東京大学工学部講師、昭和58年東京大学工学部助教授、平成11年東京大学大学院工学系研究科教授、東京大学先端科学技術研究センター教授、平成18年東京大学大学院情報理工学系研究科教授、現在に至る。専門はシステム工学、ヒューマン・インタフェース、バーチャル・リアリティ。主な著書に「バーチャル・リアリティ」(産業図書)。総務省情報化月間推進会議議長表彰、東京テクノフォーラムゴールドメダル賞、大川出版賞、など受賞。 日本バーチャルリアリティ学会会長、日本機械学会フェロー、産業技術総合研究所研究コーディネータ、情報通信研究機構プログラムコーディネータ等を歴任。

最近、心理学と工学の境界領域が注目を集めている。社会の成熟化の結果、感情や感性など、人間の心理的側面を抜きにしては、商品を語ることができなくなりつつある。こうした状況を背景として、すべての産業がこの領域に興味を持っているといっても過言ではないだろう。この領域は、「いわゆる」心理学のような基礎的科学とも異なり、IoT、VR/AR、ライフロクなどの先端的情報技術とも密接に関連する新しい体系である。本講演では、勃興しつつある、この新しい技術体系について、現在の感覚インタフェース技術の現状から説き起こし、情動という野心的な領域に技術がどれだけ踏み込めるか、基礎と応用の観点から具体例を交えつつ紹介してみたい。

神﨑 亮平

東京大学 先端科学技術研究センター 教授

1986年筑波大学大学院生物科学研究科博士課程修了。理学博士。1987年アリゾナ大学神経生物学研究所博士研究員。1991年筑波大学生物科学系助手、講師、助教授。2003年同教授。2004年東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻教授。2006年同先端科学技術研究センター生命知能システム分野教授。2013年4月より副所長。2003年よりアリゾナ大学Dep. of Neurosci. Adjunct Professor モデル生物であるカイコガの感覚・脳・行動に関する神経行動学研究、スーパーコンピュータ「京」に昆虫の脳をつくる研究、匂いセンサの研究などに従事。 日本比較生理生化学会(2011年より会長)、国際神経行動学会等会員。2008年日本比較生理生化学会・学会賞受賞。著書に、「ロボットで探る昆虫の脳と匂いの世界ファーブル昆虫記のなぞに挑む(フレグランスジャーナル社,2009),「サイボーグ昆虫、フェロモンを追う」(岩波書店,2014)など多数。

わたしたちの周りの環境は、光、音、匂い、味、触など様々な物理化学的な信号で満たされている。しかし、生物がその生存や種の維持に利用する信号は限られたものであり、生物種により異なる。生物はセンシング可能な環境下の信号を脳に統合することで、そこに「環境世界」を再現する。環境世界は進化の産物であり、動物により異なる、スーパーセンシングは、環境世界にあらたな進化をもたらすものである。講演では、ヒトとは対照的な進化を遂げた昆虫の環境世界を取り上げ、昆虫のセンサの機能改変、昆虫脳でロボットを操作する身体改変の技術(サイボーグ昆虫)を紹介し、スーパーセンシングがもたらすあたらしい世界について考えたい。

渡邊 克巳

早稲田大学 理工学術院基幹理工学部表現工学科 教授

カリフォルニア工科大学で博士号を取得後、NIH、産業技術総合研究所の研究員、東京大学先端科学技術研究センター認知科学分野准教授などを経て、現在早稲田大学理工学術院基幹理工学部表現工学科教授、東京大学先端科学技術研究センター客員准教授も兼任。 人間を含む認知行動システムの科学的理解を目的とした研究を行い、様々な心的過程を巡る現代的問題に対して科学的なパースを維持し、研究分野の枠を積極的に越えるための基盤としての認知科学の展開行っている。実験心理学・認知科学・脳科学などの手法を中心とし、人間の認知行動(とその拡張と変化)を可能にする顕在的/潜在的過程の科学的解明、それらの知見の産学連携を通じた実社会への還元を進めている。

スーパーセンシングとは私達の五感の拡張を意味する新たな概念である。近年、多様且つ高度に発達するセンサー・テクノロジーは加速する機械学習の支援を受けて、私達がかつて意識し得なかった世界の感覚情報を私達の脳にもたらしつつあります。この感覚の拡張と呼べる科学的なテーマと領域に注目し、これらの技術をいかにして私達の暮らしや社会基盤の未来を形作る価値に醸成していくのか?スーパーセンシングを新たなデザイン・メソッドやアルゴリズムの創出に繋げる論理と方法論について考えたい。

Credits

名称:super sensing forum オープニングセミナー
主催:一般社団法人スーパーセンシングフォーラム
共催:日経テクノロジーオンライン
運営:日経BP社

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